お道具達は長い旅の途中 [お道具紹介]
こんにちは 翠雀です。
千葉は台風一過、まだ雲もあり時折雨が降りますが、蝉も鳴き始めました。
これから進路になっている地域の方は十分にご注意くださいね。
道具屋をしていると、ちょっと欠けていたり・ヒビが入っていたり・完全に割れていたり等々・・・
様々な手傷を負ったお道具達に出会います。
良いものであっても、箱が揃っていなかったりすると市場でも評価が下がります。
ましてキズがあったら
『あ~ 1つキズがあるからダメだ』
周囲のそんな声に、いつも何故かちょっぴり傷つくワタシ。
顔にシミやシワができたら、手足に虫刺されの痕があったら、引っ掻きすぎてカサブタになってたらダメなんですかッ
・・・・・なんて誰も言っていないのに、なんだか自分の経年変化を指摘されたようなキモチになってしまい
私がなんとかしてあげたい
そんな、出来る当てもなく買い集めてきた道具達が
『いつになったらなんとかしてくれるの~』
とシビレをきらし始めました。
そこで今年から習い始めたのが金継ぎです。
私の先生は昔からの呼び方として、金繕いと呼んでいます。それより以前は漆繕いといったそうです。
繕うって良い言葉ですよね。
東京国立博物館の収蔵品の鍋島焼のお皿ですが
赤丸部分が金繕いをしてあります。
昔から茶人を中心に、繕いを一つの景色として愛でる文化がありました。
不完全の美とでもいうのでしょうか。
手負いのお道具達のキズを直し、むしろキズがチャームポイントになってしまうような修復が出来るように、今日は作業をしました。
取り掛かったのはこんな小鉢。
手の平におさまるカワイサです。
富士山の形が良いでしょ?
これは10個揃いなのですが、その内5個が
このように赤印のところに、小さなカケや、カケより更に小さなホツレというイタミがあります。
あまり見ない形だし、絵付けも良いのですが
『キズがあるな~』
と、かなりの低評価だった器です。
繕いの手順としては
透明漆でヒビ止め⇒弁柄漆を塗り重ねる⇒仕上げ
大ざっぱにいうとこんな感じです。
富士山小鉢はヒビ止めの作業をしまして、そのまま1週間以上乾燥させます。
漆は乾いてから塗り、乾いてから塗りの繰り返しなので、いくつもの器を同時に進行させるのが効率良いのです。
もう一つの器はこちら。
これも富士山形の向付です。
すでに透明漆を塗った後なので分かりにくいですが、これは焼き上がった時からあるヒビ、窯キズと呼ばれるものです。
隙間は開いておらず、釉薬でふさがれていますが着色がみられ、このままではお客様に使うのはためらわれます。
この着色も窯の中での事で後についたヨゴレではありませんが、繕いをすることにしました。
京都の千家十職のひとつ、永楽善五郎家の作です。
明治時代に九谷焼に指導に赴いた際のプロデュース作品だと思われます。
5つ揃いですが、一つがこの状態だった為やはり低評価。。。箱も失われていました。
私は茶事で使いたいと思い買いました。 キレイに繕えれば席中に話題を添えられますしね。
お茶をしているお客様なら、‘面白い’って思ってくれるはずです。
どのお客様に使うかで、意味を持たせることも出来ると思うのです。
足まで富士山形、ひと仕事されています。
修復教室で窯キズについて先生がこんな風におっしゃっていました。
『窯キズは神のなせる業』
確かに作ろうと思っても作れませんね。
だから修復も窯キズの痕跡を残した仕上げが良いのではないかとの事でした。
そのお考えを聞いて、ますます先生が好きになりました
昔の人は窯キズはダメージとはとらえていなかったのではないでしょうか?
だからこの器も揃いものの一つに加わって使われてきたのではないかしら。
そう思うと私が手を加えて良かったのかと悩みますが、より良くなると信じて仕上げたいと思います。
私は窯キズ好きなのかもしれません。
これ、30センチ以上ある大皿なのですが、ざっくりいってますでしょう?
縁は1センチも開いていますが、厚みがあるためシッカリとしています。
見た瞬間、雪解けをイメージしました。
雪が解け始め、一部に土が見えている景色。
花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春をみせばや
利休さんが茶道の精神を例えた和歌の景色に見立てられると思いました。
ふきのとう、つくし等の春一番に芽吹くものを盛り付けたら素敵
こういうのはどこで買うかといいますと
益子焼の陶器市です。 市内の鹿島神社で「ザ・ミステイク」という展示をするのです。
試行錯誤と多くの失敗の積み重ねの上に生み出された完成品。
その失敗した作品にスポットをあて、なぜ失敗なのか・どこが不本意なのかを作者の方に解説・説明を一筆書いていただいたものを作品と一緒に展示し、自由入札式オークションで販売されます。-----益子町観光協会より
一点物ですし、これは席中で盛り上がりそうだ~ 悩みに悩んで金額を決めて入札。
無事に入手できました。
ともすれば窯出しの際に壊されてしまったかもしれない器
小さなカケが出来た時に捨てられてもおかしくなかった器
その時々で 【残す】 選択をしてきた人達がいて
今、私の所にやってきて本来の役目で使われる。
いつか手放す日がきたら
【これ、面白い】
と思ってくれる誰かが、また現れますように。 その想いと共に。
千葉は台風一過、まだ雲もあり時折雨が降りますが、蝉も鳴き始めました。
これから進路になっている地域の方は十分にご注意くださいね。
道具屋をしていると、ちょっと欠けていたり・ヒビが入っていたり・完全に割れていたり等々・・・
様々な手傷を負ったお道具達に出会います。
良いものであっても、箱が揃っていなかったりすると市場でも評価が下がります。
ましてキズがあったら
『あ~ 1つキズがあるからダメだ』
周囲のそんな声に、いつも何故かちょっぴり傷つくワタシ。
顔にシミやシワができたら、手足に虫刺されの痕があったら、引っ掻きすぎてカサブタになってたらダメなんですかッ
・・・・・なんて誰も言っていないのに、なんだか自分の経年変化を指摘されたようなキモチになってしまい
私がなんとかしてあげたい
そんな、出来る当てもなく買い集めてきた道具達が
『いつになったらなんとかしてくれるの~』
とシビレをきらし始めました。
そこで今年から習い始めたのが金継ぎです。
私の先生は昔からの呼び方として、金繕いと呼んでいます。それより以前は漆繕いといったそうです。
繕うって良い言葉ですよね。
東京国立博物館の収蔵品の鍋島焼のお皿ですが
赤丸部分が金繕いをしてあります。
昔から茶人を中心に、繕いを一つの景色として愛でる文化がありました。
不完全の美とでもいうのでしょうか。
手負いのお道具達のキズを直し、むしろキズがチャームポイントになってしまうような修復が出来るように、今日は作業をしました。
取り掛かったのはこんな小鉢。
手の平におさまるカワイサです。
富士山の形が良いでしょ?
これは10個揃いなのですが、その内5個が
このように赤印のところに、小さなカケや、カケより更に小さなホツレというイタミがあります。
あまり見ない形だし、絵付けも良いのですが
『キズがあるな~』
と、かなりの低評価だった器です。
繕いの手順としては
透明漆でヒビ止め⇒弁柄漆を塗り重ねる⇒仕上げ
大ざっぱにいうとこんな感じです。
富士山小鉢はヒビ止めの作業をしまして、そのまま1週間以上乾燥させます。
漆は乾いてから塗り、乾いてから塗りの繰り返しなので、いくつもの器を同時に進行させるのが効率良いのです。
もう一つの器はこちら。
これも富士山形の向付です。
すでに透明漆を塗った後なので分かりにくいですが、これは焼き上がった時からあるヒビ、窯キズと呼ばれるものです。
隙間は開いておらず、釉薬でふさがれていますが着色がみられ、このままではお客様に使うのはためらわれます。
この着色も窯の中での事で後についたヨゴレではありませんが、繕いをすることにしました。
京都の千家十職のひとつ、永楽善五郎家の作です。
明治時代に九谷焼に指導に赴いた際のプロデュース作品だと思われます。
5つ揃いですが、一つがこの状態だった為やはり低評価。。。箱も失われていました。
私は茶事で使いたいと思い買いました。 キレイに繕えれば席中に話題を添えられますしね。
お茶をしているお客様なら、‘面白い’って思ってくれるはずです。
どのお客様に使うかで、意味を持たせることも出来ると思うのです。
足まで富士山形、ひと仕事されています。
修復教室で窯キズについて先生がこんな風におっしゃっていました。
『窯キズは神のなせる業』
確かに作ろうと思っても作れませんね。
だから修復も窯キズの痕跡を残した仕上げが良いのではないかとの事でした。
そのお考えを聞いて、ますます先生が好きになりました
昔の人は窯キズはダメージとはとらえていなかったのではないでしょうか?
だからこの器も揃いものの一つに加わって使われてきたのではないかしら。
そう思うと私が手を加えて良かったのかと悩みますが、より良くなると信じて仕上げたいと思います。
私は窯キズ好きなのかもしれません。
これ、30センチ以上ある大皿なのですが、ざっくりいってますでしょう?
縁は1センチも開いていますが、厚みがあるためシッカリとしています。
見た瞬間、雪解けをイメージしました。
雪が解け始め、一部に土が見えている景色。
花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春をみせばや
利休さんが茶道の精神を例えた和歌の景色に見立てられると思いました。
ふきのとう、つくし等の春一番に芽吹くものを盛り付けたら素敵
こういうのはどこで買うかといいますと
益子焼の陶器市です。 市内の鹿島神社で「ザ・ミステイク」という展示をするのです。
試行錯誤と多くの失敗の積み重ねの上に生み出された完成品。
その失敗した作品にスポットをあて、なぜ失敗なのか・どこが不本意なのかを作者の方に解説・説明を一筆書いていただいたものを作品と一緒に展示し、自由入札式オークションで販売されます。-----益子町観光協会より
一点物ですし、これは席中で盛り上がりそうだ~ 悩みに悩んで金額を決めて入札。
無事に入手できました。
ともすれば窯出しの際に壊されてしまったかもしれない器
小さなカケが出来た時に捨てられてもおかしくなかった器
その時々で 【残す】 選択をしてきた人達がいて
今、私の所にやってきて本来の役目で使われる。
いつか手放す日がきたら
【これ、面白い】
と思ってくれる誰かが、また現れますように。 その想いと共に。
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