観るべし! 杉本博司 趣味と芸術-味占郷 [旅行・おでかけ]
素晴らしい青空が広がっています。
そして庭に咲いた水仙が芳香を放っています。
こんにちは 翠雀です。
今日もお越しいただきありがとうございます!
今日の記事は写真がたっくさん&長文です。
内容はね、ただ今千葉市美術館で開催中の【杉本博司 今昔三部作/趣味と芸術-味占郷】という展覧会についてです。
もし、これから観に行くという方はネタバレになりますのでご注意を。
変な先入観を持たずに自分の眼で見て感じるのが一番だと思うからです。
今回の展覧会は杉本さんのご厚意により、全ての作品が撮影OKなので、沢山写しました。
それではご紹介します。
二部構成の一つが写真でした。
日本を含めた世界中の海の景色。海景というシリーズです。
空と海という太古の昔と変わらない景色です。
写真展が初めてな私ですが、海の景色は馴染みがあるので入り易いです。
同じレイアウトだけど空や海の明るさが違い、モノクロなのですがこの瞬間の海がどんな風だったのか
あれこれイメージが広がる作品でした。
次の部屋は
劇場シリーズです。
世界中のクラシカルな劇場に、まさに今足を踏み入れましたっていう瞬間のように切り取られています。
自分がその劇場にいて開演を待っているような気持ちになりました。
次の部屋はジオラマシリーズです。
大きな作品が3点でした。
最初は『ハイエナ・ジャッカル・ハゲタカ』という作品。
これ、写真だよね と何度も思いました。
こんな瞬間を写すことができるのでしょうか。
まるで絵画のようでした。
シマウマが襲われ沢山の動物がいるのですが、静寂で神々しい儀式を見ているような気持ちになりました。
次は『ペンシルベニア州北部原始林』
原始林が広がっています。 通り過ぎながら眺める程度だったのですが
リスがいる 危うく見過ごすところでした。
『オリンピック雨林』
大きな大きな作品です。
私知らなかったのですが、シアトルのあるワシントン州にオリンピック半島というのがあって
そこにこのような熱帯雨林地帯があるそうです。
これも原生林って感じですね。
これもね、木だけじゃなかったのです。
見つかりますか?
ほら。鹿と鳥。
こちらには少なくとも鳥が3羽いると思う。
これらの写真から感じたのは、自分がいかに見ていないかって事です。
良く見ないと見えないよ というメッセージのように思いました。
そして、地球は沢山の生き物(動物も植物も)で共有しているのだということ。
写真からこんな風に色々考えるなんて思いもしませんでした。
新しい扉が開かれたかも。
さて、次の部が一番の目的でした。
最初に向かえてくれたのは
華厳滝図という掛軸。 この華厳の滝は杉本さんの撮影による写真です。
写真が掛軸になって、それがとっても自然。ビックリです。
足元の結界は古木なのですが、足にガラスが使われていてそれに目を奪われました。
味占郷(みせんきょう)とは、婦人画報で連載されていた架空の割烹で、そこで杉本さんが構成した床飾りを再現したものです。
杉本さんのコレクションを使った床の間が27再現されていました。
どれも一筋縄ではいかないような、ヒネリの効いたものでしたが、
中でも魅入ったものをご紹介します。
足元の光るもの、なんだろう
蓋がわずかに開いていて、中には小さなガラス玉が入っていました。
『瑠璃の浄土』という名前になっており、古墳時代の古代ガラスを室町時代の根来塗の経箱に入れたもの。
箱の中にライトが仕込んであって、ホントにため息が出る位美しかったです。
瑠璃(ガラス)は光を当ててこそ、その美しさがわかるのですよね。
次は『表具道楽』というタイトル。
このお軸、何に見えますか?
私はね、桐箱に見えたの。
下の経筒をしまっておく箱だと見ました。
題箋を見ると、小田切とあり、やっと桐箱の一面が小野道風の手による墨書であることに気づきました。
こんな重要な書を桐箱仕立てにするなんて、まさに表具道楽だなぁと思いました。
私ならお行儀よくこの紙だけ貼りますもの。
それがね、後で図録を見てびっくり。
これ、桐箱じゃなくてお豆腐なんですって。道風→豆腐 あきれますね~。
杉本さんの道楽ぶりには 参りました。
利休さんから古田織部に送った手紙
ガラス製のお茶碗は村野藤六さんの作。
国宝の紅白梅図屏風を撮影した『月下紅白梅図』
なんと梅の花がこぼれていました。
硫黄島の地図は戦地以外極秘との印が押されており、一部焼失しています。
足元の革の鞄はこの地図が入っていたそうです。
栗林中将司令官の洞窟にて発見され、アメリカ軍に渡りその後戻ってきたもの。
そして、一番見たかったのは『つわものどもが夢のあと』というタイトルのこちら。
南北朝時代の兜です。内側の金箔からそれなりの武将のものだと推測されます。
菊の装飾も精密で素晴らしいです。
天へんの孔から夏草が生えています。
お軸は平安時代の法華経。 平家物語の一節が聞こえてきそうでした。
この夏草もこぼれ落ちた梅の花も、そして次の泰山木も、植物は全て木彫りなんです。
須田悦弘さんの作品です。
繊細で風が吹いたら揺れそうな、いえ、風に揺れている瞬間の草花のよう。
これが人の手で、木を使って作られたなんて信じられません。
本当に素晴らしいものばかりでした。
展示室の出口に掛けられた看板にクスっと笑ってしまいました。
杉本博司さんは古美術商という顔もお持ちとか。数寄者でいらっしゃいますね。
写真も床飾りも、何もかもが素晴らしかったです。
一つ一つに立ち止り、自分なりに読み解き、杉本さんからの公案に立ち向かった気持ちになりました。
公案というより、もっとユーモアのあるなぞなぞかな?
写真を見た友人は私とは違った解釈を語り、一人一人感じ方も違うのが面白いです。
皆さんはどう感じましたか?
この展覧会、千葉市美術館は12月23日まで。 来春は京都の細見美術館に巡回します。
私にとっては今までのどの展覧会よりも深く深く感じる展覧会でした。
関東では残り3日となりましたが、強くオススメいたします。
美術館を後に徒歩10分たらずの千葉城へ行きました。
この日も快晴です。
私の影が長くのびていて、鼻歌が出てきて。
影が長くなったら 行きつけの公園の丘に立って
『今日もまた何もなかった』 と
心の中だけで そっとつぶやこう
ここまで歌って思いました。
何もない日なんてないんじゃないかな。 良く見れば毎日は発見に満ちている。
私は今日も生きていて、明日も庭に花が咲くだろう。
みなさんにも素晴らしい明日が訪れますように。
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